「老後2000万円問題」や「NISA制度の拡充」など、資産形成の重要性が叫ばれる昨今、投資への関心が高まっています。
しかし、多くの人々にとって投資はまだ「難しい」「怖い」というイメージが強いのが現状です。
そんな中、投資の正しい知識と実践的なスキルを身につけられる新しい資格として「投資診断士」が注目を集めています。
FPよりも投資に特化し、より実務的なアドバイスができるこの資格は、金融のプロを目指す人だけでなく、自身の資産運用に活かしたい人にも魅力的です。
今回は、この新しい資格の概要や取得のメリット、将来性について詳しく見ていきましょう。
投資診断士とは

投資診断士は、一般社団法人投資診断協会が認定する民間資格です。
この資格は、投資に関する幅広い知識を持ち、適切なアドバイスができる人材の育成を目的としています。
金融リテラシーの向上や、正しい投資の考え方を広めることを通じて、日本の投資環境の改善を目指しています。
資格の概要と目的
投資診断士は、投資を検討している人や、投資に不安を感じている人々に対して、適切なアドバイスを提供するための資格です。
投資診断士は、株式、債券、投資信託、不動産投資、生命保険など、様々な金融商品について幅広く学習します。
さらに、NISA やiDeCoといった制度投資や、暗号資産(仮想通貨)などの新しい投資商品についても理解を深めます。
古典的な投資から現代のフィンテックまで、幅広く学習することで、投資家の目的やリスク許容度に合わせた、適切な投資アドバイスができるようになります。
創設の背景
投資診断士資格が創設された背景には、日本の投資環境における課題がありました。
多くの人々が投資に対して「怖い」「リスクが高い」というイメージを持ち、適切な資産形成ができていない現状がありました。
また、金融商品の販売者側も、十分な金融リテラシーを持っていないケースが多々見受けられます。
このような状況を改善するため、投資全般に関する正しい知識と考え方を持った人材を育成する必要性が高まり、こうした社会的ニーズに応えるべく、投資診断士は2019年に創設されました。
学べる知識とスキル
投資診断士の資格を取得するプロセスでは、幅広い投資関連の知識とスキルを学ぶことができます。
まず、金融リテラシーの基礎から始まり、株式、債券、投資信託、不動産投資、生命保険、現物投資、暗号資産(仮想通貨)など、様々な投資商品について詳しく学びます。
また、NISA や確定拠出年金などの制度投資についても理解を深めます。
さらに、投資商品の選び方や、投資に関わる主な法律についても学習します。
これらの知識を基に、投資家のライフプランに合わせた適切な投資商品選びや、ポートフォリオの組み方など、実践的なアドバイスのスキルを身につけることができます。
FP資格との違い
投資診断士とファイナンシャルプランナー(FP)の資格は、どちらも金融に関する知識を扱いますが、その内容と重点には違いがあります。
FPは主に「くらしとお金」に関する幅広い知識を扱い、ライフプランニングや資金計画の立案に強みがあります。
一方、投資診断士は投資に特化した資格で、投資商品の具体的な知識や選定方法、投資の考え方に重点を置いています。
FPが金融商品の仕組みなど「知識」の説明に主眼を置くのに対し、投資診断士はより実務的で、投資家の目的やリスク許容度に合わせた具体的なアドバイスができることが特徴です。
項目 | 投資診断士 | ファイナンシャルプランナー |
---|---|---|
焦点 | 投資に特化 | くらしとお金に関する幅広い知識 |
強み | 投資商品の具体的知識、選定方法 | ライフプランニング、資金計画立案 |
アプローチ | 実務的、具体的アドバイス | 金融商品の仕組み説明 |
専門性 | 投資に関する深い専門知識 | 全般的な金融知識 |
投資診断士の資格を取得するメリット
金融リテラシーを向上できる
投資診断士の資格を取得することで、総合的な金融リテラシーを大きく向上させることができます。
株式、債券、投資信託、不動産投資、生命保険など、幅広い金融商品について学ぶほか、NISAやiDeCo といった国の制度や、暗号資産(仮想通貨)などの新しい投資手法についても理解を深めることができます。
これらの知識を身につけることで、自身の資産運用にも活かすことができ、より効果的な投資戦略を立てる力が身につきます。
また、金融市場の動向や経済情勢の理解も深まるため、社会経済全体を見る目も養われるでしょう。
国家資格ではないが就職・転職の強みになる
投資診断士は民間資格ですが、金融業界での就職や転職において強みになる可能性があります。
特に、証券会社、銀行、保険会社、投資顧問会社などの金融機関では、投資に関する幅広い知識を持つ人材が求められており、投資診断士の資格は、そうした知識とスキルを持っていることの証明になります。
また、金融コンサルタントや独立系ファイナンシャルアドバイザーを目指す人にとっても、信頼性を高める有効な資格となるでしょう。
さらに、一般企業の経理部門や財務部門でも、投資に関する知識は重宝されます。
資格取得者は名刺に「投資診断士」と書くことができ、顧客や取引先との信頼関係構築にも役立ちます。
より実践的な投資アドバイスができるようになる
投資診断士の資格を取得することで、より実践的で効果的な投資アドバイスができるようになります。
この資格では、単に金融商品の知識を学ぶだけでなく、投資家の目的やリスク許容度に合わせた適切な商品選択やポートフォリオ構築の方法を学びます。
例えば、株式投資は収益性が高いがリスクも高い、一方で生命保険は安全性が高いが収益性は低いといった、各投資商品の特性を理解した上でのアドバイスが可能になります。
また、投資家の年齢や家族構成、収入状況などを考慮しながら、長期的な視点で資産形成をサポートする力も身につきます。
さらに、最新の投資トレンドや制度変更にも対応できるため、時代に即した実用的なアドバイスを提供できるようになります。
投資診断士の試験と学習
受験資格と費用
受験資格 | 年齢、学歴、職歴の制限なし |
---|---|
費用(税込) | 研修受講料+資格試験料:47,300円 再受験料:11,000円 資格更新料(2年ごと):22,000円 |
投資診断士の資格試験は、年齢や学歴、職歴などの制限がなく、誰でも受験することができます。
これは、幅広い層に投資の知識を広めるという資格の趣旨に基づいています。
受験にあたっての費用は、研修受講料と資格試験料を合わせて47,300円(税込)となっており、テキスト代や動画教材の視聴料も含まれています。
なお、試験に不合格だった場合の再受験料は11,000円(税込)です。
また、資格取得後は2年ごとに更新が必要で、更新料は22,000円(税込)となっています。
これらの費用は、資格の価値や得られる知識を考えると、十分に投資する価値があると言えるでしょう。
学習方法とテキスト
- テキスト学習(試験申し込み後約1週間で届く)
- 動画教材視聴(約6時間)
- テキストでの復習
- 最新の投資ニュースや情報のチェック
投資診断士の資格取得に向けた学習方法は、主にテキストと動画教材を用いた自己学習となります。
試験申し込み後、約1週間でテキストが自宅に届きます。
このテキストは投資全般に関する幅広い内容をカバーしており、基礎から応用まで体系的に学ぶことができます。
また、動画教材も提供されており、合計約6時間の講義を視聴することで、テキストの内容を補完し、より理解を深めるのに役立ちます。
学習にあたっては、テキストを読み込み、動画を視聴し、その後再度テキストで復習するという方法が効果的です。
また、投資に関する最新のニュースや情報にも目を通すことで、より実践的な知識を身につけることができるでしょう。
試験の内容と合格基準
- 試験時間:60分
- 問題形式:60問(選択式)
- 合格基準:100点満点中60点以上
- 試験方式:CBT(Computer Based Testing)
- 試験会場:全国260箇所のテストセンター
投資診断士の試験は、60分間で60問の選択式問題に解答する形式で行われます。
試験の出題範囲は幅広く、以下の内容が含まれます:
- 金融リテラシー
- 投資の基礎知識
- 各種投資商品(株式、債券、投資信託、不動産投資、生命保険、現物投資、暗号資産など)
- 制度投資(確定拠出年金、NISAなど)
- 投資商品の選び方
- 関連法規
合格基準は100点満点中60点以上、6割以上の正解率で合格となります。
試験は、全国260箇所のテストセンターでCBT方式で実施されており、受験者は都合の良い日時と場所を選んで受験することができます。
合否はその場で即時に判明します。
難易度や合格率はどのくらい?
投資診断協会の代表理事によると、研修を受けてテキストをしっかりと勉強すれば、基本的に合格できるレベルとのことです。
難易度としては、FP3級よりは少し難しく、FP2級よりは易しいレベルと考えられています。
ただし、投資や金融に関する予備知識がない場合は、より多くの学習時間が必要になる可能性があります。
投資診断士の活躍の場は?
金融機関での活用
- 銀行、証券会社、保険会社での顧客アドバイス
- 金融商品の開発・運用部門での活用
- コンプライアンス部門でのリスク管理
投資診断士の資格は、金融機関で働く人々にとって非常に有用です。
銀行や証券会社、保険会社などで顧客と接する営業職の方々は、この資格を活かして、より質の高い投資アドバイスを提供することができます。
例えば、顧客の年齢、収入、リスク許容度などを考慮しながら、適切な投資商品を提案したり、バランスの取れたポートフォリオ構築をサポートしたりすることができます。
また、金融商品の開発部門や運用部門でも、幅広い投資知識を活かして、より魅力的で競争力のある商品開発に貢献できるでしょう。
さらに、コンプライアンス部門では、投資に関する法規制の理解を深めることで、より適切なリスク管理や顧客保護を実現することができます。
投資教育での役割
- 学校や企業でのセミナー・講座開催
- 高校での金融教育(18歳成人に伴う必須化)
- 一般向け投資セミナーや企業従業員向け資産形成講座の開催
投資診断士は、投資教育の場でも重要な役割を果たすことができます。
近年、日本では金融教育の重要性が認識され始めており、学校教育や社会人教育の場で投資に関する知識を広める機会が増えています。
投資診断士は、その幅広い知識を活かして、学校や企業でセミナーや講座を開催し、基礎的な金融リテラシーから実践的な投資手法まで、幅広い内容を教えることができます。
特に、18歳成人に伴い高校での金融教育が必須化されたことを背景に、投資診断士の教育現場での需要は高まっています。
また、一般の方々向けの投資セミナーや、企業の従業員向けの資産形成講座なども開催することで、社会全体の投資リテラシー向上に貢献することができるでしょう。
個人投資家としての活用
- 自身の資産運用の質向上
- 最適なポートフォリオ構築
- 効率的な資産形成や節税対策
投資診断士の資格は、個人投資家としての活動にも大いに役立ちます。
この資格で得られる幅広い投資知識は、自身の資産運用の質を大きく向上させることができます。
例えば、様々な投資商品の特性やリスク、リターンを理解した上で、自身の投資目的やリスク許容度に合わせた最適なポートフォリオを構築することができます。
また、市場の動向や経済情勢の分析力も向上するため、より適切なタイミングで投資判断が下せるようになることが期待されます。
さらに、税制や制度投資についての知識も身につくため、より効率的な資産形成や節税対策を行うこともできるでしょう。
このように、投資診断士の資格は、個人投資家として自身の資産を守り、増やすための強力なツールとなります。
投資診断士の将来性は?
投資診断士の資格は今後重要性を増すと考えられます。
まず、低金利環境や高齢化社会の進展により、投資の必要性が高まっているからです。
投資診断士は社会のニーズに応える資格として注目されています。
金融機関だけでなく、企業の従業員向け金融教育や学校の金融リテラシー授業でも活躍が期待されています。
ネット証券や暗号通貨(仮想通貨)などフィンテックの発展により、個人が直接投資に関わる機会も増えていますが、複雑化する金融商品や投資手法を理解し、適切なアドバイスができる人材は重要です。
資格の認知度はまだ高くありませんが、将来的には、投資診断士が金融アドバイザーの標準的な資格として認識される可能性があります。
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