「老後2000万円問題」や「新NISA制度の拡充」など、資産形成の重要性が叫ばれる昨今、投資への関心がこれまでになく高まっています。
しかし、多くの人々にとって投資はまだ「難しい」「怖い」というイメージが根強いのが現状です。
そんな中、投資の正しい知識と実践的なスキルを身につけられる資格として「投資診断士」が注目を集めています。
FPよりも投資に特化し、より実務的なアドバイスができるこの資格は、金融のプロを目指す人だけでなく、自身の資産運用に活かしたい人にも人気です。
この記事では、投資診断士の概要や取得のメリット、将来性について詳しく解説していきます。
投資診断士とは

投資診断士は、一般社団法人投資診断協会が認定する民間資格です。
この資格は、投資に関する幅広い知識を持ち、適切なアドバイスができる人材の育成を目的としています。
金融リテラシーの向上や、正しい投資の考え方を広めることを通じて、「日本に正しい投資の考え方を根付かせる」という理念のもと活動しています。
資格の概要と目的
投資診断士は、投資を検討している人や、投資に不安を感じている人々に対して、適切なアドバイスを提供するための資格です。
投資診断士は、株式、債券、投資信託、不動産投資、生命保険など、さまざまな金融商品について幅広く学習します。
さらに、2024年に大幅拡充され、2027年からは未成年向けの「こどもNISA」も始まる新NISAやiDeCoといった制度投資、暗号資産(仮想通貨)などの新しい投資商品についても理解を深めます。
また、情報技術(IT)を活用した投資手法が増加していることから、現代の投資を理解するうえで欠かせないITリテラシーについても研修に盛り込まれています。
古典的な投資から現代のフィンテックまで、幅広く学習することで、投資家の目的やリスク許容度に合わせた適切なアドバイスができるようになります。
創設の背景
投資診断士資格が創設された背景には、日本の投資環境における課題がありました。
多くの人々が投資に対して「怖い」「リスクが高い」というイメージを持ち、適切な資産形成ができていない現状があったのです。
また、金融商品の販売者側も、十分な金融リテラシーを持っていないケースが多々見受けられます。
このような状況を改善するため、投資全般に関する正しい知識と考え方を持った人材を育成する必要性が高まりました。
こうした社会的ニーズに応えるべく、投資診断士は2019年に創設され、現在では金融業界のみならず、一般の方々にも広く取得されています。
学べる知識とスキル
投資診断士の資格を取得するプロセスでは、幅広い投資関連の知識とスキルを学べます。
まず、金融リテラシーの基礎から始まり、株式、債券、投資信託、不動産投資、生命保険、FX、デリバティブ、現物投資、暗号資産(仮想通貨)など、さまざまな投資商品について詳しく学びます。
また、2024年1月から大幅に拡充・恒久化された新NISAや確定拠出年金などの制度投資についても理解を深めます。2026年度の税制改正では18歳未満を対象とした「こどもNISA」の創設も決定しており、制度の学習範囲はさらに広がっています。
さらに、投資商品の選び方やポートフォリオの考え方、投資に関わる主な法律についても学習します。
これらの知識を基に、投資家のライフプランに合わせた適切な投資商品選びや、バランスの取れたポートフォリオ構築など、実践的なアドバイスのスキルを身につけられます。
FP資格との違い
投資診断士とファイナンシャルプランナー(FP)の資格は、どちらも金融に関する知識を扱いますが、その内容と重点には大きな違いがあります。
FPは主に「くらしとお金」に関する幅広い知識を扱い、ライフプランニングや資金計画の立案に強みがあります。FPには国家資格である「FP技能士」のほか、「AFP」や「CFP」といった民間資格も存在します。
一方、投資診断士は投資に特化した民間資格で、投資商品の具体的な知識や選定方法、投資の考え方に重点を置いています。
FPが金融商品の仕組みなど「知識」の説明に主眼を置くのに対し、投資診断士はより実務的で、投資家の目的やリスク許容度に合わせた具体的なアドバイスができることが特徴です。
| 項目 | 投資診断士 | ファイナンシャルプランナー |
|---|---|---|
| 焦点 | 投資に特化 | くらしとお金に関する幅広い知識 |
| 強み | 投資商品の具体的知識、選定方法 | ライフプランニング、資金計画立案 |
| アプローチ | 実務的、具体的アドバイス | 金融商品の仕組み説明 |
| 専門性 | 投資に関する深い専門知識 | 全般的な金融知識 |
| 資格種別 | 民間資格のみ | 国家資格(FP技能士)と民間資格(AFP/CFP) |
投資診断士の資格を取得するメリット
金融リテラシーを向上できる
投資診断士の資格を取得することで、総合的な金融リテラシーを大きく向上させられます。
株式、債券、投資信託、不動産投資、生命保険など、幅広い金融商品について学ぶほか、新NISAやiDeCoといった国の制度や、暗号資産(仮想通貨)などの新しい投資手法についても理解を深めることができます。
これらの知識を身につけることで、自身の資産運用にも活かせますし、より効果的な投資戦略を立てる力が身につきます。
また、金融市場の動向や経済情勢の理解も深まるため、社会経済全体を見る目も養われるでしょう。
国家資格ではないが就職・転職の強みになる
投資診断士は民間資格ですが、金融業界での就職や転職において強みになる可能性があります。
特に、証券会社、銀行、保険会社、投資顧問会社などの金融機関では、投資に関する幅広い知識を持つ人材が求められており、投資診断士の資格は、そうした知識とスキルを持っていることの証明になります。
また、金融コンサルタントや独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)を目指す人にとっても、信頼性を高める有効な資格となるでしょう。
さらに、一般企業の経理部門や財務部門でも、投資に関する知識は重宝されます。
資格取得者は名刺に「投資診断士」と記載でき、顧客や取引先との信頼関係構築にも役立ちます。株式会社木下不動産や株式会社タカラレーベン東北など、社内推奨資格として設定している企業も出てきています。
より実践的な投資アドバイスができるようになる
投資診断士の資格を取得することで、より実践的で効果的な投資アドバイスができるようになります。
この資格では、単に金融商品の知識を学ぶだけでなく、投資家の目的やリスク許容度に合わせた適切な商品選択やポートフォリオ構築の方法を学びます。
例えば、株式投資は収益性が高いがリスクも高い、一方で生命保険は安全性が高いが収益性は低いといった、各投資商品の特性を理解したうえでのアドバイスが可能になります。
また、投資家の年齢や家族構成、収入状況などを考慮しながら、長期的な視点で資産形成をサポートする力も身につきます。
さらに、最新の投資トレンドや制度変更にも対応できるため、時代に即した実用的なアドバイスを提供できるようになります。
J-FLEC認定アドバイザーへの道も開ける
投資診断士を取得することで、国の機関である金融経済教育推進機構(J-FLEC)が運営する「J-FLEC認定アドバイザー」への道も開けます。
J-FLECは2024年8月から本格稼働した組織で、国民の金融リテラシー向上に向けた取り組みを推進しています。2025年3月時点で、J-FLEC認定アドバイザーは累計1,236名が認定されています。
実際に投資診断士からJ-FLEC認定アドバイザーに認定される資格者も出てきており、活躍の場がさらに広がっています。
投資診断士の試験と学習
受験資格と費用
| 受験資格 | 年齢、学歴、職歴の制限なし |
|---|---|
| 費用(税込) | 研修受講料+資格試験料:47,300円 再受験料:11,000円 資格更新料(1年ごと):11,000円 |
投資診断士の資格試験は、年齢や学歴、職歴などの制限がなく、誰でも受験することができます。
これは、幅広い層に投資の知識を広めるという資格の趣旨に基づいています。学生から社会人、主婦の方まで、投資に関心があるすべての人が挑戦できます。
受験にあたっての費用は、研修受講料と資格試験料を合わせて47,300円(税込)となっており、テキスト代や動画教材の視聴料も含まれています。
なお、試験に不合格だった場合の再受験料は11,000円(税込)で、初回受験申込から1年以内に再受験が可能です。
また、資格取得後は1年ごとに更新が必要で、更新料は11,000円(税込)となっています。
これらの費用は、資格の価値や得られる知識を考えると、十分に投資する価値があります。
学習方法とテキスト
- テキスト学習(決済完了後約1週間で届く)
- e-ラーニング動画視聴
- テキストでの復習
- 最新の投資ニュースや情報のチェック
投資診断士の資格取得に向けた学習方法は、主にテキストとe-ラーニング動画を用いた自己学習となります。
決済完了後、約1週間でテキストが自宅に届きます。
このテキストは投資全般に関する幅広い内容をカバーしており、基礎から応用まで体系的に学べます。
また、e-ラーニング動画も提供されており、講義を視聴することで、テキストの内容を補完し、より理解を深められます。
学習にあたっては、テキストを読み込み、動画を視聴し、その後再度テキストで復習するという方法が効果的です。
また、投資に関する最新のニュースや情報にも目を通すことで、より実践的な知識を身につけられます。
試験の内容と合格基準
- 試験時間:60分
- 問題形式:60問(選択式)
- 合格基準:100点満点中60点以上
- 試験方式:CBT(Computer Based Testing)
- 試験会場:全国260箇所のテストセンター
投資診断士の試験は、60分間で60問の選択式問題に解答する形式で行われます。
試験の出題範囲は幅広く、以下の内容が含まれます。
- 金融リテラシー
- 投資の基礎知識
- 各種投資商品(株式、債券、投資信託、不動産投資、生命保険、FX、デリバティブ、現物投資、暗号資産など)
- 制度投資(確定拠出年金、新NISAなど)
- ポートフォリオの考え方
- 投資商品の選び方
- 関連法規
合格基準は100点満点中60点以上で、6割以上の正解率で合格となります。
試験は、全国260箇所のテストセンターでCBT方式により実施されており、受験者は都合の良い日時と場所を選んで受験できます。試験日程は申込の3週間(21日)後以降、1年以内で選択可能です。
合否はその場で即時に判明します。
難易度や合格率はどのくらい?
投資診断協会によると、研修を受けてテキストをしっかりと勉強すれば、基本的に合格できるレベルとのことです。
難易度としては、FP3級よりは少し難しく、FP2級よりは易しいレベルと考えられています。証券外務員2種と同程度という声も多いです。
合格率は公式には非公開ですが、しっかりと準備をすれば高い確率で合格できると言われており、一般的には65〜80%程度と推測されています。
推奨される学習時間は20〜30時間程度で、金融知識がある方であれば1〜2週間、初心者の方でも1ヶ月程度の学習で合格を目指せます。
ただし、投資や金融に関する予備知識がない場合は、FP3級のテキストなどで予習しておくと、よりスムーズに学習を進められるでしょう。
投資診断士の活躍の場は?
金融機関での活用
- 銀行、証券会社、保険会社での顧客アドバイス
- 金融商品の開発・運用部門での活用
- コンプライアンス部門でのリスク管理
投資診断士の資格は、金融機関で働く人々にとって有用です。
銀行や証券会社、保険会社などで顧客と接する営業職の方々は、この資格を活かして、より質の高い投資アドバイスを提供できます。
例えば、顧客の年齢、収入、リスク許容度などを考慮しながら、適切な投資商品を提案したり、バランスの取れたポートフォリオ構築をサポートしたりできます。
また、金融商品の開発部門や運用部門でも、幅広い投資知識を活かして、より魅力的で競争力のある商品開発に貢献できるでしょう。
さらに、コンプライアンス部門では、投資に関する法規制の理解を深めることで、より適切なリスク管理や顧客保護を実現できます。
投資教育での役割
- 学校や企業でのセミナー・講座開催
- 高校での金融教育(2022年の成人年齢引き下げに伴う必須化)
- 一般向け投資セミナーや企業従業員向け資産形成講座の開催
投資診断士は、投資教育の場でも重要な役割を果たせます。
近年、日本では金融教育の重要性が認識され始めており、学校教育や社会人教育の場で投資に関する知識を広める機会が増えています。
投資診断士は、その幅広い知識を活かして、学校や企業でセミナーや講座を開催し、基礎的な金融リテラシーから実践的な投資手法まで、幅広い内容を教えられます。
特に、2022年4月の成人年齢引き下げに伴い、高校での金融教育が必須化されたことを背景に、投資診断士の教育現場での需要は高まっています。投資診断協会では、実際に公立高校や大学で資産形成の授業を実施しています。
また、投資診断協会では「マネティ講師養成講座」を提供しており、投資診断士資格保有者は協会認定の講師(マネティ講師)として活動できます。企業の従業員向け資産形成講座なども開催でき、社会全体の投資リテラシー向上に貢献できます。
個人投資家としての活用
- 自身の資産運用の質向上
- 最適なポートフォリオ構築
- 効率的な資産形成や節税対策
投資診断士の資格は、個人投資家としての活動にも大いに役立ちます。
この資格で得られる幅広い投資知識は、自身の資産運用の質を大きく向上させます。
例えば、さまざまな投資商品の特性やリスク、リターンを理解したうえで、自身の投資目的やリスク許容度に合わせた最適なポートフォリオを構築できます。
また、市場の動向や経済情勢の分析力も向上するため、より適切なタイミングで投資判断が下せるようになることが期待されます。
さらに、新NISAやiDeCoなどの税制優遇制度についての知識も身につくため、より効率的な資産形成や節税対策を行うこともできるでしょう。
このように、投資診断士の資格は、個人投資家として自身の資産を守り、増やすための強力なツールとなります。
投資診断士の将来性は?
投資診断士の資格は今後さらに重要性を増すと考えられます。
まず、低金利環境や高齢化社会の進展、そして「人生100年時代」と言われる長寿化により、投資による資産形成の必要性がこれまで以上に高まっているからです。
2024年1月から新NISA制度がスタートし、年間投資枠が最大360万円、生涯投資枠が1,800万円に大幅拡充されました。非課税保有期間も無期限化され、2025年6月末時点でNISA口座数は約2,696万口座に達しています。さらに、2026年度の税制改正では18歳未満も利用できる「こどもNISA」の創設が決定し、2027年からスタートする予定です。政府は「貯蓄から投資へ」の流れをさらに加速させています。
また、2024年8月に本格稼働を開始した金融経済教育推進機構(J-FLEC)は、2025年3月時点で認定アドバイザーが1,236名を超えるなど、官民一体となった金融リテラシー向上の動きが加速しています。投資診断協会もJ-FLECと連携したセミナーを開催するなど、投資診断士の活躍の場は広がっています。
金融機関だけでなく、企業の従業員向け金融教育や学校の金融リテラシー授業でも活躍が期待されています。
ネット証券の普及や暗号資産(仮想通貨)などフィンテックの発展により、個人が直接投資に関わる機会も増えています。複雑化する金融商品や投資手法を理解し、適切なアドバイスができる人材はますます重要になっていくでしょう。
2019年に創設されたばかりの若い資格ですが、社会のニーズに応える資格として認知度は着実に高まっています。将来的には、投資診断士が金融アドバイザーの標準的な資格として認識される可能性も十分にあります。


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